日本を代表する国際空港と言えば、
- 羽田空港
- 成田空港
- 関西空港
- 中部国際空港
の4つが挙げられるのですが、このうち、羽田空港と成田空港には共通した弱点が存在していました。
それが、ラウンジサービス。
もちろん、これら2つの空港は、JALにとってもANAにとっても、日本を代表する重要な国際空港として、威信をかけて高品質で野心的なラウンジを設置・運営していることは間違いありません。
しかし、このような航空会社ラウンジは、あくまでそれを運営する航空会社やその提携航空会社の運航便でファーストクラスやビジネスクラスに搭乗する上位クラス利用者に加え、一定以上の有償搭乗を積み重ねることで到達した上級会員(ステイタス会員)のみを対象としているという制限が存在しています。
もちろん、世界の空港ラウンジの中には、航空会社が運営するもの以外に、空港運営会社やラウンジサービス提供会社が運営するものも数多く存在していて、それらの世界各地の空港ラウンジとの契約を束ね上げ、会員限定でお得&スムーズに利用できるようになるプライオリティパスなどのサービスも広く普及しているのですが、一方で、成田空港も羽田空港もそうしたサービスへの対応は必ずしも積極的ではなかったというのが利用者側から感じる正直な感想でした。
そうしたプライオリティパスを巡る状況に大きな変化が生じることになったのが、2023年7月。
それまで、成田空港でプライオリティパスが利用できる対象としては、
第1ターミナル
- ANAラウンジ
- KALラウンジ
- IASS Executive Lounge
第2ターミナル
- IASS Executive Lounge
という、特に第2ターミナルが特に寂しい状況だったものが、
第1ターミナルに「I.A.S.S SUPERIOR LOUNGE 希和 -NOA-」が追加され、第2ターミナルにも「I.A.S.S SUPERIOR LOUNGE 虚空 -KoCoo-」と「ナインアワーズ成田空港」が追加されたことで、
第1ターミナル
- ANAラウンジ
- KALラウンジ
- IASS Executive Lounge
- I.A.S.S SUPERIOR LOUNGE 希和 -NOA-
第2ターミナル
- IASS Executive Lounge
- I.A.S.S SUPERIOR LOUNGE 虚空 -KoCoo-
- ナインアワーズ成田空港
という、なかなかに奥行きと華やかさを兼ね備えたラインナップへと急速に変貌しました。
目次
プライオリティパスで無料での仮眠と割引での宿泊が可能になったナインアワーズ成田空港
こうして新たにプライオリティパスでの利用が可能になったサービスの中で、特に異色の存在と言えるのがナインアワーズ成田空港。
というのも、2014年に開業したカプセルホテルタイプのホテルなのですが、こだわる部分と割り切る部分とにメリハリをつけることで、成田空港の敷地内唯一のホテルという抜群の立地ながら、比較的割安な宿泊料金を提示するホテルと言えます。
そんなナインアワーズ成田空港では、プライオリティパスの利用者を対象に2023年7月から、
- 5時間までの仮眠を無料利用可能
- 宿泊料金から3,400円分割引
という2つのコースを用意。
ちなみに、仮眠にも宿泊にも、
- カプセルの利用(毛布や枕)
- シャワーの利用(タオル類やバスアメニティ)
- ロッカーの利用(鍵やハンガー、靴置き)
に含まれることは変わらず、
- 利用可能時間帯
- 最大利用可能時間
- 必要な追加コスト
で使い分ける必要がありそうです。
なぜなら、
- 仮眠:成田空港からの出発まで24時間以内かつ、9時から18時までの間に最大5時間を無料利用可能
- 宿泊:成田空港からの出発まで24時間以内かつ、14時から20時の間にチェックインし、翌日10時まで最大20時間の宿泊滞在が可能
という、はっきりと異なる特徴を持っているから。
そこで、プライオリティパスでの宿泊とはどんなものなのか気になったため、実際にナインアワーズ成田空港にプライオリティパスでの割引を利用して、滞在してみることにしました。
実際にナインアワーズ成田空港をプライオリティパスで利用する際、最も気をつけなくてはいけないのは、利用条件です。
というのも、仮眠5時間の無料利用も、宿泊最大20時間の割引利用も、
- 事前予約は不可で、実際にナインアワーズ成田空港を訪れたタイミングにカプセルに空きがあることが必要。
- 宿泊での割引利用では、事前予約で提示される料金よりも割高な料金からの割引となるため、意外と安くならないケースもあり。
のような弱点を抱えているから。
特に、日本国内が全体的に海外からの渡航者が増加傾向継続中のため、ナインアワーズ成田空港も混雑していて、満室になってしまうリスクもあるのですが、仮眠ならまだしも、宿泊を希望していた場合、万が一満室で利用できないとなると、かなり困った自体に陥ってしまう可能性も十分あります。
ナインアワーズ成田空港へのアクセス
ナインアワーズ成田空港は、前述の通り、成田空港第2ターミナルに立地するホテルなのですが、第2ターミナルのどこにあるのか、簡単にイメージできるという方は少し限られるかもしれません。
というのも、ナインアワーズ成田空港は、旅客ターミナルとは少し離れた場所に位置しているから。
ただし、気をつけて見てみると、第2ターミナル内にも意外に多くのナインアワーズ成田空港までの道順を示す案内板が用意されていますから、迷う心配はそれほど大きなものではないはずです。
具体的には、第2ターミナルの鉄道駅のある地下2階やターミナル2階から駐車場(P2南やP3)のある方向に向かい、その後でエスカレーターやエレベーター、階段などで地下1階に移動すると到着できるようになっています。
ナインアワーズ成田空港までの道すがら、成田空港にこんな場所があったんだ!と思わず驚く瞬間もあるかもしれません。
ナインアワーズ成田空港でのプライオリティパス受付手続き
さて、こうして到着したナインアワーズ成田空港ですが、前述の通り、実際にプライオリティパスを利用するための条件がいくつか存在していて、それらを満たさない限り、プライオリティパスでの受付手続き自体ができないことになっています。
その具体的な条件としては、
仮眠(無料):
- ホテルの受付を訪れたタイミングでカプセルに空きがあること
- 到着時の利用ではないこと(2023年7月現在到着時の利用は不可)
- 成田空港からの出発の24時間以内のタイミングであること
- 9時から18時までの間の最大5時間に限っての利用であること(18時以降は宿泊として利用する必要あり)
- 受付時には、プライオリティパス会員本人の搭乗券やEチケットなどの予約媒体とプライオリティパスを提示できること
宿泊(3,400円割引):
- ホテルの受付を訪れたタイミングでカプセルに空きがあること
- 到着時の利用ではないこと(2023年7月現在到着時の利用は不可)
- 成田空港からの出発の24時間以内のタイミングであること
- 14時から20時までの間にチェックインが可能で翌日10時までの最大20時間の利用であること
- 事前予約からの切り替え等は一切できず、通常料金よりも割高な当日直接料金(最大10,000円ほど)からの3,400円引きになること
- 受付時には、プライオリティパス会員本人の搭乗券やEチケット控えなどの予約媒体とプライオリティパスを提示できること
というものです。
条件を満たした上で、ナインアワーズ成田空港のフロントスタッフに受付の手続きをお願いすると、航空券情報を確認・記録し、プライオリティパスを登録し、受付は完了。
このあたりは、プライオリティパスでのラウンジ利用と大きく変わるものではありません。
ちなみに、フロント脇にある男女別に分かれた宿泊エリア入口近くには、
- ペット入館不可
- 携帯電話の使用不可
- (カプセル内での)飲食不可(ただし、水は可とのこと)
- 館内禁煙
などの注意書きが毅然と、それでいて分かりやすく記載されていますから、利用者がお互いに快適に過ごすためのマナーを周知するという意味では好印象を感じました。
ナインアワーズ成田空港の貸し出し品と返却方法
こうして受付の手続きが完了すると、フロントスタッフから、ロッカーの鍵と上のバッグに入れられたアメニティ類が手渡されます。
バッグの中のアメニティはというと、
- タオルセット(バスタオル、フェイスタオル、バスマット)
- 館内着
- スリッパ
- 歯ブラシセット
となっていて、それぞれ返却方法や処分方法に指定があるのは要注意。
具体的には、
- タオルセットはシャワーブース近くやロッカールーム入口のタオル回収ボックス。
- スリッパはロッカールーム入口近くのスリッパ用ゴミ箱
- バッグと館内着は、チェックアウトの際にフロントスタッフに手渡しで返却
というように指定されているため、フロントスタッフによる説明を聞き逃してしまったり、ホテル内に掲示された案内を見過ごしてしまうと、あっさりうっかりミスをしてしまいそうですから、結構注意が必要かもしれません。
ちなみに、1人1人に鍵と一緒に貸し出されるロッカーもなかなか大きなスーツケースも収納できるスペースは確保されていて、様々な利用者の需要に対応できると感じる作りです。
ナインアワーズ成田空港のカプセルホテルとしての快適性と限界
これらのアメニティ類をその手に始まるナインアワーズ成田空港での滞在ですが、2014年に開業した比較的新しいカプセルホテルということもあって、清潔性や快適性にもある程度以上の配慮が感じられる作りになっています。
実際、カプセルの部屋自体は狭いものの、ただただ睡眠をとることだけに注目すると、それには十分な広さとなかなか高品質なマットレスのサポートを実感できるはずです。
また、シャワーブースや洗面エリア、トイレなど、他の利用者と共用する部分についても、スタッフによる清掃やメンテナンスをしっかり行っているようでした。
ただし、サービスの取捨選択にメリハリやこだわりを感じるナインアワーズ成田空港ですが、絶対に忘れてはいけないのは、カプセルホテルとしてのサービスが提供されているということです。
つまり、
- カプセルホテルとしての法律上の制限でカプセル入口に鍵を設置することが不可
- 周囲からいびきや目覚ましのアラームが聞こえてくる可能性がある(フロントで耳栓を無料配布)
- カプセルには1段目と2段目があり、1段目になると他の利用者が周囲を歩く度にその足音が気になるリスクが有る
- カプセルの2段目になると、カプセルを出入りするたびに暗く照明が落とされた中、はしごの上り下りが発生してしまう
- シャワーブースや洗面エリア、トイレは、他の利用者と共用のため、混雑する時には使いたい時にすぐに使えなかったり、衛生面での品質が低下するリスクがある
といった部分でカプセルホテルとしての快適性に限界を感じてしまう方もいらっしゃるかもしれません。
ただ、私の場合、比較的寝付きがよいこともあってか、カプセル内でも周囲からの物音に悩まされることもなく、そのまま朝までぐっすりでしたから、カプセルホテルだからそれほど大変な滞在という印象は感じませんでした。
また、シャワーブースや洗面エリア、トイレに衛生面での品質についても、混雑する時間帯を避けた上で利用できたこともあってか、特に気になる部分がなく、かなり頑張って気を配っていると感じたのも正直な部分です。
プライオリティパスでのナインアワーズ成田空港宿泊のライバル
こうした形でサービスが提供されることになるプライオリティパスでのナインアワーズ成田空港の利用ですが、少し考える必要があるのが、どのようにプライオリティパスを活用するべきなのか、ということです。
というのも、宿泊でのプライオリティパスの利用の場合、最大10,000円の当日直接料金から3,400円分の割引を引いて、差額の支払金額は6,600円になり、この金額、あるいはもう少しだけコスト負担を追加することで、カプセルホテルではない通常のホテルに滞在し、しかも、ホテルが運行する無料の空港連絡バスで成田空港を訪れることも可能になるから。
実際、インバウンドが増加し、首都圏の利便性の良いホテルが活況を呈している状況では、6,600円という金額もそういうものだと言われたなら、そうなのかもしれないと考えてしまうかもしれません。
しかし、それでも、通常のプライオリティパス利用時のようなお得度は感じにくいのも正直な部分。
実際、プライオリティパスの利用を考えずにナインアワーズ成田空港での宿泊を検討する場合、ナインアワーズ成田空港の公式サイトの会員登録での10%オフサービスや、じゃらんなど国内OTAでのクーポンやポイント割引などを利用する方が、当日直接料金から3,400円を割引した金額よりも安価になることが多くなっています。
ただし、ナインアワーズ成田空港の公式サイトや日本国内のOTAの利用にある種のハードルがあるかもしれない海外から日本を訪れる方々にとっては、3,400円がストレートにズドンと割り引かれる貴重な割引になる可能性も考えられますから、この部分は少しだけ要注意ですね。
そうした考えの経過もあって、個人的には、ナインアワーズ成田空港でプライオリティパス宿泊を選ぶのは、
- 満室になってしまっていたなどの事情で、当日になって宿泊できないと発覚するリスクあり
- プライオリティパスで3,400円分もの割引を利用したとしても、当日直接料金はかなり割高になってしまうリスクあり
といった事情から、あまり積極的な利用はおすすめできず、基本的にはとりあせず活用できるタイミングでの5時間までの仮眠を選んでおくのが良さそうです。
実際、最大5時間までの仮眠とは言え、カプセルやロッカーはもちろん、シャワーも自由に使えるなど、宿泊のサービスの多くを仮眠がそのまま持ち合わせているわけですから。
まとめ
2023年7月にこれまでにないほどプライオリティパスで利用できるサービスの充実を見せることになった成田空港。
その中でも、仮眠と宿泊という、似ているようで結構違う2つのサービスラインナップを用意し、参戦してきたナインアワーズ成田空港はその中でも意外に注目を集める新サービスなのは間違いありません。
また、今後日本国内でも、プライオリティパスで提供されるサービスの幅がより一層広がることに現実味を帯びさせたという意味でも、興味深いサービス内容になっています。
特に、5時間の仮眠は無料で利用できるため、一度実際に足を運んで利用してみるのも面白いと思いますよ。
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