搭乗する飛行機の出発までくつろぎながら時間を過ごすための空港ラウンジ。
JALが国際線の重要拠点の1つとしている羽田空港にもファーストクラスラウンジと2ヶ所のサクララウンジが用意済み。
この2つのラウンジは、利用クラスや保有している上級会員ステイタスによって、
- ファーストクラスラウンジ:ワンワールド加盟航空会社運航ファーストクラス利用者、ワンワールドエメラルドステイタス保有者
- サクララウンジ:ワンワールド加盟航空会社運航ビジネスクラス利用者、JAL運航プレミアムエコノミー利用者、ワンワールドサファイアステイタス保有者
というように案内され、実際に利用できるラウンジはあらかじめ決まっています。
そんなファーストクラスラウンジとサクララウンジの両方を利用して気がつくのは意外なまでに重なる大きな共通点と、スパイスのようにピリリとアクセントを加える小さくもはっきりとした違いの両方の存在でした。
提供される食事の共通点と違い
ファーストクラスラウンジとサクララウンジを比べて、意外な共通点の多さに驚くものの1つが提供される食事の内容です。
なぜなら、ファーストクラスラウンジだからと言って、そこで提供される料理や食材がサクララウンジと完全に異なるわけではなく、かなりの部分で共通している部分があるから。
実際に2018年2月にファーストクラスとサクララウンジで提供されている食事メニューの中から、夕食の内容をピックアップしてみると、
ファーストクラスラウンジとサクララウンジ共通(20種)
- マカロニグラタン
- チキンの香草焼き
- 焼売(黒豚入り)
- えび海鮮餃子
- 手まり寿司サーモン
- 四川風麻婆豆腐丼
- 温うどん
- 炊きたてごはん(山形県産 はえぬき)
- 味噌汁
- かつお梅干し
- 割干だいこんたまり
- フレッシュサラダバー
- クロワッサン
- バゲット
- ストロベリーデニッシュ
- シナモンロール
- パーカーハウス
- 高菜パン
- ミニアップルクリーム
- JAL特製オリジナルビーフカレー
ファーストクラスラウンジのみで提供(17種)
- 焼き鯖押し寿司
- 山形風いも煮
- 士幌ポテトサラダ
- 蒸野菜の盛り合わせ
- 豆サラダイタリアーノ
- コーンチャウダー
- オマール海老のビスク
- 季節のピクルス(蕪)
- 海老とアボカドのサラダ仕立て
- グリルチキンのピンチョス
- 牡蠣のピンチョス
- ホエー豚の中華煮
- チーズ盛り合わせ
- フレッシュカットフルーツ
- チョコレートケーキ
- ミニ大福(紅)
- ミニ大福(白)
サクララウンジのみで提供(3種)
- トマトクリームスープ
- ハムとポテトのスープ
- ミックスフルーツ
という結果になります。
確かにファーストクラスラウンジの方がサクララウンジとの共通メニューに加えて、17種類もの追加で内容が充実しているものの、それは副菜やスープ、おつまみ、デザートなどが中心。
逆に、JAL特製オリジナルビーフカレーを筆頭に、食事のメインとなる内容の大半はファーストクラスラウンジとサクララウンジの両方で楽しめることに変わりはありません。
また、握り寿司のような本格的なものではないながら、サクララウンジでも手まり寿司サーモンが用意されているのも面白いですね。
こうした傾向は朝食や昼食などそれぞれ異なるメニューが用意される他の時間帯も同様。
ただし、そうした食事の内容の中でも、ファーストクラスラウンジだけの特別な存在といえるのがスペシャルメニューとして提供時間限定で用意されている鉄板焼きサービス。
具体的には、7時から11時30分までのJAL オリジナル ライ麦ガレット。
そして、17時30分から23時30分までの上ミスジカットステーキの2種類。
この2種類の料理だけは、(一部の混雑が予想される時間を除いて)シェフが目の前で注文を受けてから調理した出来たて熱々のものを楽しめるという意味で、コスト面を惜しまないファーストクラスラウンジらしい存在感をピリリと感じさせるスパイスのような特長と言えるはず。
提供されるアルコールの共通点と違い
サクララウンジと共通したラインナップにファーストクラス限定で提供されるものを追加する手法は、料理の他にアルコールなどの飲み物の面でもファーストクラスラウンジとサクララウンジの違いを生み出す方法として活躍しています。
特に、その傾向はハードリカーを中心に顕著。
ただし、サクララウンジでもファーストクラスラウンジとは全く別の銘柄で構成された、
- 季節のワインセレクション
- こだわりの日本酒
といった期間限定のアルコールラインナップが提供されていて、料理のラインナップよりも工夫やこだわりが見られます。
もちろん、細かく比べながらチェックしてみると、ファーストクラスラウンジではシャンパンのローラン・ペリエとさらにもう1種類が提供されている一方で、サクララウンジではあくまでスパークリングワインが提供されているといった一例が表すように、用意されている銘柄の価格帯には違いがあるものの、それぞれのラウンジで極力楽しめるようなラインナップが頑張って提供されていると感じました。
また、ファーストクラスラウンジの炭酸水はガラスボトル入りのペリエが提供されている一方で、サクララウンジではドリンクサーバーから利用する炭酸水のみといった細かな違いも。
ラウンジインテリアの共通点と違い
ラウンジの印象を大きく左右するインテリアは、ファーストクラスラウンジとサクララウンジの間でどちらも和のテイストをコンセプトとしながら、共通点と違いの両方を実感させてくれるポイントかもしれません。
同じダイニングエリア同士で比べても、ファーストクラスラウンジは上の写真のように、ホワイトとブラウンを基調としたシンプルなしつらえながら、椅子などの調度品が持つ質感がワンポイント的に上品な印象を与えてくれます。
一方のサクララウンジは木目をイメージさせる模様や色合いがどこか温かな印象を感じさせるもの。
確かにどちらのラウンジも最近のJALのラウンジコンセプトにマッチしたものながら、出発前の時間をダイニングで食事をのんびり楽しむという目的では、サクララウンジの方が好みという方も多いかもしれませんね。
しかし、そんな中でファーストクラスラウンジとサクララウンジの間ではっきりと違うのは、ラウンジに用意された席に与えられる専有面積。
上の写真のように、ファーストクラスラウンジに用意された椅子は、様々な種類があるものの、その全てがゆったりとした横幅があり座り心地が良好なのはもちろん、隣の椅子との間隔も確保済み。
混雑してきた時も周囲との距離感も適度に保てるような形で配置。
一方のサクララウンジでは、上の写真のように一部の席ではかなり窮屈な印象を感じる椅子の配置だったり、座面自体がコンパクトでゆったりと座ってくつろぐのが難しい椅子も用意されています。
もちろん、サクララウンジにもファーストクラスラウンジに負けないくらい様々な種類の椅子が用意されていますから、くつろぎたい時にはゆったりとした椅子に座るというように用途や好みに応じて好きな椅子を選べるのが一番。
しかし、サクララウンジが本当に混雑する時はかなり凄い混雑具合になってしまうため、そんなことを言っていられないケースがあるのも事実。
様々なタイミングでラウンジを利用する場合、椅子ごとに大きな当たりハズレがなく、安定して快適に過ごせるという意味では、やはりファーストクラスラウンジのインテリアは優れていると感じてしまいます。
また、ファーストクラス利用者やワンワールドエメラルドなど本来はファーストクラスラウンジを利用できる対象者用にサクララウンジ内に用意された専用エリアもファーストクラスラウンジのようなゆったりとした作りと配置になっていることからも、混雑時のサクララウンジ対策の意図のようなものが感じられました。
また、インテリアと言って、忘れてはいけないのはファーストクラスラウンジ限定で整備され、その特長の1つにもなっているRED SUITEと呼ばれるエリア。
個人的にはあまり落ち着かないため、ここでゆったりとくつろいで過ごすということは選択しないのですが、それでもJALが考えるファーストクラスラウンジインテリアの1つの理想形を体感する上でも足を運んでみるのはおすすめ。
実際、ファーストクラスラウンジ限定のシャンパンのローラン・ペリエや無料の靴磨きサービスの提供など、このエリアでしか利用できないサービスもありますから。
ラウンジ内の無料サービスの共通点と違い
ファーストクラスラウンジとサクララウンジの利用者が共通して利用できるサービスは意外に多く、
- ロッカーによる手荷物預かり
- シャワールーム
- 複合機によるコピーとFAX
- マッサージ機によるマッサージ
といった内容が無料で提供中。
特に、マッサージサービスは、市場で現在販売されているものの中ではなかなか高品質な機種が利用できるようになっていて、出発前のリフレッシュにはぴったり。
とは言え、羽田空港ではファーストクラスラウンジのみで提供されていた10分間の有人マッサージサービスが2017年9月末で終了してしまったため、それ以降はファーストクラスラウンジとサクララウンジで全く違いがないサービスという位置付けになってしまったのはやはり利用者としては少し残念に感じてしまいます。
逆にファーストクラスラウンジだけで提供されているサービスと言えば、JOHN LOBB(ジョン ロブ)による靴磨きサービスや毎月1日から数量限定で数種類の新刊本が無料でプレゼントされるサービスなどが提供中。
ただし、この新刊本プレゼントはかなり競争率が高いらしく、場合によっては中旬はもちろん、初旬の段階ですでに在庫払底ということも。
そんな状況ですから余り期待せず、残っていたらラッキーくらいの感覚でラウンジ受付のスタッフの方に問い合わせてみるのがおすすめ。
ちなみに、本館とサテライトの2ヶ所のファーストクラスラウンジを有する成田空港の場合、どちらか一方で新刊本の在庫が無くなっていても、もう一方のラウンジでは在庫が残っているというケースもあるのですが、元々複数のファーストクラスラウンジが用意されていない羽田空港では期待できないことですね。
まとめ
こうしてファーストクラスラウンジとサクララウンジの提供されているサービスを比べてみると、それぞれのラウンジで全く別のサービスが提供されているわけではなく、あくまでサクララウンジのサービスに追加の付加価値をプラスしたものがファーストクラスラウンジのサービスを形作っているのが印象的です。
そのため、日本を代表する航空会社の1つがその拠点空港で運営するラウンジとしての期待される基本的な機能について、ファーストクラスラウンジもサクララウンジも、正直それほど大きな違いはありません。
ただし、それぞれのサービスごとにファーストクラスラウンジとサクララウンジであまり差を感じさせない部分や想像以上に大きな差を設定している部分との間には、JAL側のはっきりとして取捨選択の意図によるメリハリが存在しているのも事実。
そうした特徴を重視するのか/重視しないのか。
あるいは、気になるのか/気にならないのか、といった利用者側の個性や好みの違いが、ファーストクラスラウンジにサクララウンジをどの程度上回る価値を感じ、そのアクセスを重要視するのかを左右する分かれ道のようなものになると感じています。
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