青森県弘前(ひろさき)市。
そこは、新幹線が乗り入れる新青森駅や飛行機の発着する青森空港からはレンタカーなどで1時間ほどの位置にある、青森県の中核都市の1つ。
りんごの剪定技術を応用した結果、1本1本の木ごとに国内屈指のボリュームを誇る桜の名所として有名な弘前公園もこの街にあります。
そんな弘前市に、10月の3連休を利用した青森旅行の目的地の1つとして訪れることにしました。
アクセスに選んだのは一年近く前に予約していたブリティッシュエアウェイズでのJAL国内線特典航空券。
同じように9月の連休に計画していた札幌行きは台風の直撃で泣く泣くキャンセルになったため、今回の青森行きはそのリベンジとしても楽しみにしていました。
日本商工会議所 初代会頭の秘蔵の庭
今回の青森旅行の目的の1つが、藤田記念庭園と呼ばれる庭園の見学。
この藤田記念庭園は、今なお経済三団体の一つとして、日本経済団体連合会、経済同友会と並び立つ、日本商工会議所の初代会頭をも務めた元貴族院議員、藤田謙一の別荘に併設された秘蔵の庭として有名なものです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/藤田記念庭園
https://ja.wikipedia.org/wiki/藤田謙一
しかも、2017年10月の3連休には「ひろさきハイカラ庭園 」と題された無料の一般開放が連休初日からの2日連続の日程で行なわれるということもあって、その1日目を狙って訪れることにしました。
記念庭園という名前の通り、庭としてのボリューム感を左右する広さや庭としての質を左右する完成度もかなりのものでした。
メインとなる伝統的な日本式庭園も、サイズ的に大きすぎず全体的に楽しみやすいのはもちろん、密度感や景色としての一体感なども、高い次元で調和しているのも好印象。
私の好きなタイプの庭です。
また、坂の多い街としても知られる弘前の中でも険しい崖にあたる部分を意欲的に活かした立体的な庭作りになっているらしく、庭園内にはなかなか見事な滝も流れていました。
一個人の邸宅、しかも本宅ではない別荘に、専用の滝まで有した庭を作ってしまうあたりに、明治大正期の実業家の栄華が偲ばれますね。
もちろん、別荘ですから、庭だけではなく住居部分も用意され、それらは今も文化財として保護され、現存していました。
まずは、景色の良い崖の上のエリア(高台部)にある、1階のガラス窓によるテラスが特長的な洋館。
同じく高台部にある和館その1。
崖の下の低地部にある和館その2。
それぞれの建物は一部のエリアを除いて、特別に開放されているようで、自由にじっくり内部を見学できるのも嬉しいですね。
将棋の名人戦などの対局の場としても利用される和室も、足を踏み入れることはできないものの、廊下からかなり間近にそのしつらえを楽しめました。
こうした中でも目を引いたのは水琴窟の存在。
素焼きのかめなどを地面の下に埋めて作り出した空洞を活用する日本庭園独自の装飾を兼ねた一種の楽器とでも呼べる江戸時代からの由緒あるもの。
https://ja.wikipedia.org/wiki/水琴窟
上の写真の玉砂利の部分に水を垂らすと、柔らかくどこか儚げで繊細な琴のような音色を楽しめました。
お得すぎる レトロバス・人力車ツアー
そんな藤田記念庭園のひろさきハイカラ庭園の1日目はあまり天気が良いものではなく、小雨が少し降る中での開催になりました。
まず、参加したのは全国に3台しか運行されていないというレトロバス、「日野 K-RE101」を活用したバスツアー、ひろさきハイカラレトロバスめぐり。
この企画は、約40年前に作られたレトロバスに乗って、藤田記念庭園を起点とした約1時間の弘前市内観光を楽しむというもの。
しかも、わずか1人100円の参加費負担のみで、普段は青森県外からの修学旅行生などのアテンドを担当しているベテランバスガイドによる案内も受けられるなど、充実度とお得度はとても高いのが魅力です。
バス自体はエアコンがない、座席が固め、網棚があるなど、たしかにレトロ感を感じるものの、手入れが行き届いているのか、とても良好な状態を維持。
肝心のガイドツアーも、天気に恵まれなかったとは言え、雨に濡れることなく、バスの車内からコンパクトに纏められた弘前の名所案内を楽しめました。
一部のホテル好き・・・ではなく、ごく限られた一部の旅館好きの間で、一度は泊まりたい老舗宿としても有名な明治12年から続く石場旅館の前も少しだけ速度を落とした状態で通過。
途中、雨が落ち着いたタイミングを見計らって、かつて江戸時代にこの弘前の地を治めていた歴代藩主が眠る由緒ある菩提寺、長勝寺でしばし下車し、見学するおまけつきでした。
これだけバスでの移動を満喫して、さらにガイド付きなのに、一般的な路線バスよりも安い100円という料金設定はイベント価格とは言え、ちょっと信じられませんね。
また、レトロバスツアーを楽しんだ後、天気が良くなってきたこともあって、参加することにしたのが人力車ツアー。
こちらは15分程度の短い時間ですが、プロの人力車夫の方によるガイドを受けながら、藤田記念庭園内を見学するというもの。
こちらも参加費はとてもリーズナブルで、定員2名の人力車1台で500円。
つまり、大人2人での利用の場合は、1人250円ということになります。
確かに15分というあまり長くはない時間でしたが、藤田記念庭園を人力車からの少し高い目線で楽しみながら、ダイジェスト的にガイドしてもらうにはちょうど良く、これまた魅力的なイベントで、実際、予約が必要になるほどの盛況ぶり。
やはり安すぎ&お得すぎですよね。
幻の津軽そばでのお手軽ランチと和館縁側でのデザートタイム
朝から庭園内をあれこれ見学しているとあっという間に時間が過ぎて、昼食の頃合いになりました。
イベント開催中ということもあって、洋館や和館はもちろん、藤田記念庭園内のあちこちにお店が出店されていたのですが、その中でも選んだのが低地部に臨時で営業している、そば処 にしという店舗。
この店舗は通常時は観光案内を行う「西」案内所に設営されているため、「にし」となかなかベタなネーミングですが、実は侮れない実力店。
なぜなら、弘前市内の製麺所の中でも明治21年創業の老舗として知られるアキモト製麺の幻とまでうたわれる津軽そばを気軽に楽しめるから。
実際、一杯450円の山菜そばと天ぷらそばを注文したのですが、ふわりと広がるそばの香りと独特の食感が心地よく、甘く優しいつゆとあいまって、少し肌寒い小雨の中での移動のあとということもあって、ほっと一息つけました。
津軽そばを食べたあとはデザートを楽しむために、低地部にある和館近くに移動しました。
ここでは、500円で抹茶が楽しめるサービスが提供されているのですが、ここでの隠れた目玉はセットとして振る舞われる和菓子。
寛永2年・・・、1630年の江戸時代初期に創業した老舗中の老舗和菓子屋さんの限定和菓子をここでは味わえます。
ちょうど縁側の席も空いていたので、そこに座布団を敷いてもらい、庭園を眺めながらのデザートタイムを満喫。
天気があまり良くなかったためか、来場者も少なくあまりに静かな状況です。
まるで和館を独占しているような、とても贅沢で優雅な時間を過ごせたのは幸運でした。
まとめ
実は弘前公園とは道路を挟んで隣接しているだけという、アクセス面でもとても便利な藤田記念庭園は、知る人ぞ知る隠れ家的な名所の1つです。
確かに桜の時期の弘前公園のような分かりやすい華やかさはないものの、日本商工会議所の初代会頭や貴族院議員をも務めた明治・大正期の実業家によって作り出された空間は、伝統とそれを支える質感に裏打ちされた本物ばかり。
確かに、小さなお子さん連れの場合、主要な目的地として楽しむのは難しいかもしれないのですが、歴史などに興味を持ち始めた小学生以上の方には、手軽に間違いのない本物の質感を楽しむ機会として活躍できる潜在能力を十分感じます。
特に、毎年10月頃に開催されているひろさきハイカラ庭園は、よりお得に深く楽しめるチャンスですから、そうした機会を狙ってみるのもおすすめだと思いますよ。
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