飛行機を利用する時、気になる遅延や欠航といったトラブル。
特に、飛行機の場合、欠航はともかく、遅延の方は様々な理由から15分未満なら定時での運航とみなされるのですが、その15分を超えてしまった遅延の場合は、スケジュール通りの運航ができる航空会社としての成績や実績を悪化させてしまうことは避けられません。
そのため、航空会社側も安全を最優先としながら、その範囲内で、可能な限り遅れが生じないようにという努力の積み重ねの結果として運航が行われています。
目次
航空会社事由の遅延とそれ以外の不可抗力での遅延
こうした航空会社側の努力もあって、飛行機の利用時に大幅な遅延に遭遇する可能性はかなり低く抑えられているのですが、運が悪かったり、そもそも飛行機を利用する機会自体が多かったりすると、全く出会わないというわけではないというのが悲しい部分です。
そうして運悪く遅延などのトラブルに巻き込まれてしまった場合、大切になるのは航空会社側でどのようなサポートとしての特別対応を提供してくれるのかということなのですが、スムーズに不足なく特別対応を受けるためには、大切なことが1つ存在しています。
それは、その遅延の原因が航空会社事由か、それ以外の事由かを見分けること。
この事由というのは、責任と読み替えると分かりやすく、つまり、航空会社の責任での遅延なのか、それともそれ以外の不可抗力による航空会社には責任のない遅延なのかの区別ができることが大切という意味です。
それぞれの具体例としては、
航空会社事由:
- 使用する飛行機に故障が発生し、定刻通りの運航ができない
- 航空会社の予約システムや運航システムにエラーが発生し、通常通りの運航ができない
- 乗務員などがルール違反を行ってしまい、予定していた運航ができない
それ以外の不可抗力の事由:
- 台風や大雨、大雪、濃霧などの悪天候が原因で通常通りの運航ができない
といった形になります。
ちなみに、航空会社事由の場合、手数料無料での予約変更や全額払い戻しに加え、他の航空会社や新幹線といった自社以外の公共交通機関への利用者側の差額負担なしでの振替、さらには、宿泊する必要が生じた場合、その宿泊費も航空会社側が負担することになるなど、利用者側から見るとかなり手厚い補償が特別対応として提供されることが分かります。
その一方で、悪天候などの航空会社側の努力ではどうしようもなく、航空会社事由ではない場合、提供される特別対応は手数料無料での予約変更や全額払い戻しに限られるなど、利用者側が感じる手厚さに大きな差を感じるのは避けられないはずです。
使用機材到着遅れによる遅延の原因と航空会社の責任
ただし、少し気をつけなくてはいけないのは、飛行機を利用する際に遭遇する可能性のある遅延や欠航といったトラブルが、航空会社事由とそれ以外の不可抗力の事由とにきれいに分けられるのかというとそうではないということです。
その一例が、使用機材到着遅れによる遅延。
この遅延は、これから搭乗する予定の飛行機が、その前の便として運航されていた際に定刻から遅れて到着するなどして、次の便の出発や到着にもその遅れがどんどん波及してしまうというものです。
ちなみに、こうした遅延が発生する理由としては、
- 搭乗者数が多く、全員の搭乗完了まで通常より時間を要した
- 寒さの厳しい冬の時期や土産物などの多い帰省の時期などで、機内に上着や荷物を持ち込む利用者が多く、頭上の荷物入れへの収納に時間を要した
- 空港の保安検査場の混雑により搭乗予定の飛行機に定刻の出発時間までにたどり着けてなかった利用者を待った
- 出発空港や到着空港の離発着待ち飛行機による混雑で待ち時間が発生し、スムーズな離発着ができなかった
など、本当に様々。
しかし、そのいずれも、航空会社だけの責任とはっきり言い切れるものではないものの、逆に航空会社に全く責任がないとは言い切れるわけでもないなど、判断が難しいというのが正直な部分もあります。
そのため、実際に使用機材到着遅れによる遅延が発生した場合、基本的には航空会社に責任のない不可抗力な事由のトラブルとして扱われ、おおむね30分以上のものに限って提供される特別対応についても、手数料無料での予約変更や全額払い戻しに限られる状況です。
ただし、使用機材到着遅れによる遅延で終電に乗れないなど、なかなか深刻な状況に陥った利用者が生じた際は事情が少し異なります。
というのも、そうしたケースでは、公共交通機関としての役割を担う航空会社としての人道的な対応や顧客サービスの一環なのか、宿泊費や交通費の補償を行われるなど、少し不思議な形での特別対応が提供されることもあるからです。
JAL922 那覇空港から羽田空港への最終便での使用機材到着遅れによる遅延
そうなると気になるのは、実際に使用機材到着遅れが原因の遅延で補償が行われたケースではどのようなことが起きるのかということかもしれません。
私にとって使用機材到着遅れが原因での補償を受けることになった最新の事例は、2022年にJAL922(JL922)を利用した時のことでした。
このJAL922は沖縄・那覇空港から東京・羽田空港に向かうその日の最終便として、その当時は
- 沖縄・那覇 21:00 → 東京・羽田空港 23:00
のスケジュールで運航されることになっていました。
しかし、この日は、東京と沖縄との間を結ぶ便が一日中全ての便でほぼ満席という状況で、どうしても搭乗と降機に時間を要し続けた結果、同じ機材が往復を繰り返すことの多い羽田-那覇線は、早朝から発生した遅延が雪だるま式でどんどん蓄積。
そうして積み重なり続けた遅延は、JAL922の出発1時間前の段階で40分、出発の直前には45分にもなっていました。
元々羽田空港に23:00到着予定だった便に45分の遅延が発生するということは、羽田空港到着は23:45になってしまうということです。
しかも、飛行機の到着時間というのは、着陸後に飛行機が完全に停止するタイミングのことですから、その後に、
- 飛行機とボーディングブリッジを接続を待つ時間
- 飛行機のドアの開放を待つ時間
- 飛行機から空港駅までの移動時間
がさらに追加で必要になります。
ちなみに、都心方面に向かう京急とモノレールの最終電車は、その当時、
- 京急 23:48
- 東京モノレール 23:44
となっていましたから、羽田空港への到着時間が23:45となってしまった時点でそれらの利用は、余程の飛行中の巻き返しがない限り、絶望的ということが分かります。
もちろん、このJAL922の遅延の場合、使用機材到着遅れが原因ということで、かなり早い段階で遅れが発生することが分かっていましたから、無料での予約変更などの特別対応の対象にはなっていた関係で、より早い時間に出発する便に変更するのが最も安心な選択肢だったのは間違いありません。
しかし、一日中ほとんどの便がほぼ満席の混雑状況では、いくら特別対応の対象だとしても、変更を希望する先の前便の空席がそもそも存在しない場合、45分の遅延が予定されているJAL 922にそのまま搭乗する以外に選択肢はありませんでした。
そのままJAL922便に搭乗した結果はと言うと、羽田空港に着陸し、飛行機のドアが開いたのは23時48分頃。
つまり、出発前から想定されていた通りの結果とは言え、飛行機の外に出る前の時点で都内への移動を希望する場合の終電を逃してしまうことが確定したわけです。
ちなみに、京急を利用した神奈川方面への移動を希望する場合、都内方面よりも終電が遅い関係で、京急蒲田経由での選択肢がいくつか残っている時間でしたから、神奈川方面へ移動するための終電を目指して飛行機から降りた直後から第1ターミナルを全力で疾走されている方も何人かいらっしゃいました。
使用機材到着遅れが原因の遅延に対するJALの補償とその内容
こうして那覇空港を出発する前から予想された通り、使用機材到着遅れが原因の45分もの遅れを維持したまま羽田空港に到着したJAL922便ですが、そうした状況を受けて、JAL側もただ手をこまねいていたわけではありません。
というのも、那覇空港では実際の遅延後の搭乗開始時刻の約1時間ほど前から、制限エリア内にある、
- JAL乗り継ぎカウンター
- JALラウンジレセプション
などで、地上係員の方々が、
- 立替費用精算書
- JAL立替精算デスクの宛先付きのラベル
- 封筒
がセットになった立替精算による補償手続きに必要な書類をあらかじめ配り始めていたから。
ちなみに、これらのセットは利用者1名につき1セット配られましたから、2人での利用の場合、上の写真のように、2セット配られることになります。
この中でも最も重要な「立替費用精算書」の内容を見ていくと、JAL側が今回の使用機材到着遅れが原因の遅延に対して、どのような補償を提供する用意があるのかあらかじめ把握できますから、できるだけ早いタイミングで全体像を確認するのがおすすめです。
精算手続き利用時の条件としては、
- JAL922便の遅延に伴って利用者が負担することになった費用を1名毎に5,000円まで補償
- 対象はタクシーを含む交通費と宿泊費の実際に負担した金額
- 立替費用の精算は銀行振込でJAL側が必要書類受け取り後、通常2週間以内に実施
- 書類の発送手続きは遅延発生日から30日以内の期限あり
- 必要書類は、立替費用精算書、領収書(コピー不可のため、原本)の2種類
といったもの。
また、書類に記入する必要のある情報としては、遅延が発生した予約便の、
- 日時
- 区間
- 便名
- 確認番号(8桁)
- 航空券番号(13桁)
といった航空券情報。
それに加えて、
- 名前
- 電話番号
- 住所
- JMB会員番号
- 同行者の名前やJMB会員番号
などの個人情報。
もちろん、精算の手続きを進めるために必要な、
- 振込先の銀行口座情報
- 立替費用の内訳
なども記載が必要になります。
こうして並べてみると項目が多く感じられるかもしれませんが、それほど難しさを感じることなく書類作成が完了できる内容ですから、遅延発生から30日間の締め切りが到来する前にサクッと早めに手続きしてしまうのがおすすめですね。
さて、1つだけ注意しなくてはいけないのは、立替精算でJALに負担してもらえる金額が1人につき5,000円までに限られることです。
なぜなら、京急や東京モノレールの終電が出発してしまった後に、羽田空港からの移動を希望する場合、タクシーを利用することになるのですが、終電後の時間の利用にはもれなく深夜料金の割増負担も必要になるため、補償上限の5,000円では都内でも本当に限られた一部の地域までの移動しかJAL負担での全額カバーとならず、多くの場合、自己負担が発生してしまうのは避けられないから。
もちろん、我が家のように、複数人でJAL922便に搭乗していて、5,000円×人数分の金額が補償上限となったのなら、状況は多少異なってくるのですが、そういった幸運なケースばかりではないはずです。
そうしたタクシー利用で自己負担の発生が危惧される場合、一度検討して欲しいのが空港やその周辺にあるホテルに宿泊するというもの。
実際、羽田空港の場合、空港内にあるホテルはもちろん、無料で利用可能なシャトルバスを夜遅くまで運行しているホテルも多く用意されていて、その利用のハードルは想像以上に低いものです。
また、シャトルバスが運行されていなくても、羽田空港から数駅程度の近場のホテルであれば、品川などの都内方面よりも遅くまで運行されている京急蒲田方面の終電を利用することでアクセスすることも可能だったりします。
ちなみに、遅延が原因で宿泊が必要になった場合、その滞在先となるホテルまでの合理的な範囲内の交通費もJALによる補償対象になりますから、可能な限り移動に要した費用の領収書や利用履歴などは手続き時に提示できるようにあらかじめ準備しておくのがおすすめです。
実際、我が家の場合も、昼間とは異なる形で様々なリスクが高くなる夜遅い時間帯にタクシーで移動するのではなく、当日限定価格としてかなり安価な料金を提示していたホテルに自己負担がない形で宿泊することにしました。
JALから立替精算での補償を受けるための手続きと振込までの必要日数
こうして準備した、
- 立替費用精算書
- 領収書
は、JAL側に用意された封筒とJAL立替精算デスクの宛先付きラベルを利用して郵送することになります。
ちなみに、宛先付きラベルは、そのまま利用することで、料金受取人払郵便として扱われるように手続きが行われているものですから、利用者の料金負担なく発送できる実質的な着払いが可能なのが特長です。
ただし、この料金受取人払による着払いは、普通郵便として送る場合に限って有効なのは要注意。
というのも、日本の郵便サービスは世界的に見てもまだまだ優秀とされるものですが、今回のようなケースでは、同行者2人以上が一緒に立替精算の手続きをすることも可能な以上、取り扱う金額が10,000円を超えてしまう可能性もありますから、万が一の配送中の紛失に備える意味でも、追加料金を支払う必要があるとしても、追跡可能な方法での発送をおすすめしたいから。
具体的な追跡可能な種類の発送方法としては、
- 特定記録:160円の追加負担
- 簡易書留:320円の追加負担
- レターパックライト:370円の負担(宛先付きラベル利用による負担軽減は不可)
- レターパックプラス:520円の負担(宛先付きラベル利用による負担軽減は不可)
などが考えられますが、それぞれのサービス毎に、料金が異なるのと同様に、
- ポスト投函か手渡し
- 配達スピードは速達扱いか普通郵便扱いか
- 万が一の紛失時の補償の有無と金額
- そのまま封筒として使えるかどうか
などがサービス面でも性質が異なりますから、必要になる追加負担と希望するサービス内容のバランスを考えて選ぶのが大切。
ちなみに、私の場合は、
- 最低限必要な安心をリーズナブルに:特定記録(160円の追加負担)
- 安価なのに手軽な発送と素早い配達:レターパックライト(定価の370円をそのまま全部負担)
を基本に考えるようにしています。
さて、実際に発送を完了すると、あとはJAL側での手続きの完了を待つのみ。
ちなみに、立替精算の手続きは、その後、JAL側から手紙や電話、メールなどでの何らかの連絡があるわけではなく、指定した銀行口座への立替金額の振込みが行われることで完了します。
気になる必要日数ですが、JAL側の案内では必要書類の到着から通常2週間以内となっていますが、実際の我が家での経過としては、
- 1日目:JAL側に必要書類が到着
- 9日目:指定した銀行口座への振込完了
となっていましたから、書類到着から8日目には手続きが全て完了し、JALが案内する2週間以内という期限はしっかりと時間的猶予が確保されていることが分かりますね。
JALにはっきりとした責任のある航空会社事由の遅延発生時の補償との違い
このような形でJALによる補償が行われることもある使用機材到着遅れが原因の遅延ですが、補償の内容としては控えめでJALとしても本腰を入れていないような印象を受けるのも事実。
実際、JAL側にはっきりとした責任のある航空会社事由とされるトラブルが原因の遅延発生時には、15,000円までなど、より高額な上限金額が設定され、対応の幅も広がりますから。
こうした違いも、航空会社にとって使用機材到着遅れによる遅延は、台風や大雪などと同じように、不可抗力に近いものとしつつも、あくまで航空会社としては人道的な対応や顧客サービスの一環として提供しているに過ぎないのかもしれないと感じるポイントの1つです。
ちなみに、同じ立替精算の手続きでも、それぞれのケースによっては、今回の手続きで必要だった、
- 立替費用精算書
- 領収書
に加え、
- 搭乗券かeチケット控え
などの予約内容を詳細な確認形で確認できる媒体を要求されることがあるのも、そう何度も遭遇することではないとは言え要注意ですね。
まとめ
運が悪いと意外にあっさり予兆なく遭遇してしまう一方で、航空会社側としては補償までは積極的に踏み込もうはしないタイプの遅延の1つ、使用機材到着遅れによる遅延。
その中でも、1日の遅延がどんどん蓄積した結果、そのしわ寄せの影響が最大になり、元々とは余裕があったはずの終電を含めた空港発の電車を逃してしまうトラブルの原因にまでなりうる最終便利用時は、特に心配なものの1つと言えるかもしれません。
実際、使用機材到着遅れに対しては、悪天候による遅延と同様、あまり補償に積極的ではない航空会社とはいえ、終電に間に合わないレベルの遅延が発生し、結果的に利用者へ無視できない金銭的負担が発生しうる状況になってしまった場合には、十分とは言えないものの、立替精算による補償が受けられるのも事実です。
ただし、こうした立替精算による補償は、今後、立替精算による手続きを行う想定し必要な書類をあらかじめ準備する必要もあったりもしますから、万が一、今後、自身や家族、友人、知人などがそうぐうしてしまったときに備えて、全体像や全体の流れだけでも確認しておくというのもおすすめだと思いますよ。
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