日本から最も近いヨーロッパとして、近年注目を集めている極東ロシアの港町、ウラジオストク。
2020年にはJALもANAも新規路線の1つとして、先を争うように就航したことからも注目の高さが伺いしれますね。
特に、最近まで世界最高レベルの渡航自由度を誇るとされる日本のパスポートでも、ロシアに対してはビザ無しでの渡航が制限されていたにも関わらず、今現在はウラジオストクを含む極東ロシアなどの地域への渡航には、一般的なビザに比べて取得が格段に容易な電子ビザでの渡航が可能になるなど、ロシア側による政策面での強力な追い風もあるとは言え、一般の利用者にとっても想像以上に身近でお手軽な渡航先となるはずです。
目次
ウラジオストクを拠点の1つとするワンワールド加盟航空会社、S7航空
そんなウラジオストクは、JALと同様に、ワンワールドに加盟するS7航空が拠点の1つとする国際空港、ウラジオストク空港が存在しています。
実際、このウラジオストク空港からは、
- ソウル(ICN)
- 北京(PEK)
- 上海(PVG)
- 台北(TPE)
- 香港(HKG)
- ベトナム・カムラン(CXR)
- バンコク(BKK)
のようなアジアを中心とした周辺国とウラジオストクとを結ぶ国際線が運航されているだけではなく、それらの国際線と、
- イルクーツク(IKT)
- ハバロフスク(KHV)
- クラスノヤルスク・イェメリャノヴォ(KJA)
- マガダン・ソコル(GDX)
- ノヴォシビルスク・トルマチョーヴォ(OVB)
- ペトロパブロフスク・カムチャツキー・エリゾヴォ(PKC)
- ヤクーツク(YKS)
- ユジノサハリンスク(UUS)
といったロシア国内線を接続するというハブ空港という重要な役割を果たしている空港なのは間違いありません。
ただし、このS7航空は、
- 安価な運賃では預入荷物や事前座席指定の利用が有料
- 機内持ち込み手荷物の個数や重量の制限が厳しい
- 機内食が質素
というように、ワンワールドに加盟する航空会社の中でも、格安航空会社(LCC)を強く意識したものになっているのは要注意です。
そのため、一般的なワンワールドの航空会社と同じ感覚で利用すると、驚いてしまう場面に遭遇したり、思わぬ形で追加の出費を強いられるリスクも十分考えられます。
S7航空の機内持ち込み手荷物10kgの重量制限
預入荷物が基本的に有料となるS7航空を利用する場合、特に気をつけなくてはいけない制限の1つが機内持ち込み手荷物の10kgの制限です。
なぜなら、S7航空には、
- 預入荷物に必要な料金負担を回避するために、機内持ち込み手荷物のみでの利用を希望する利用者が多い
- チェックインカウンターでのチェックイン手続きで機内持ち込み手荷物の計量がしっかり行われ、重量超過の有無が厳格にチェックされる
- チェックインカウンターでのチェックで機内持ち込み手荷物の重量上限10kgの超過が確認されると、有料の預入荷物への切り替えが必要になる
- チェックインカウンターで支払う預け入れ荷物の料金は事前に支払うよりも数十%割高に設定
というような特徴があるから。
つまり、S7航空をお得に利用するのであれば、うっかり機内持ち込み手荷物の重量が10kgを超えてしまうことがないように気をつける必要があるということですね。
ちなみに、JALを含め、日本の大手航空会社にも機内持ち込み手荷物は10kgまでという制限はあるものの、これらの航空会社の場合、機内持ち込み手荷物の重量が計量されることが一般的ではないことに加え、仮に計量され、そこで超過が確認できた場合でも、預入荷物として無料で預けることが可能ですから、実質的に10kgの重量超過による追加負担が問題になることはありません。
S7航空の機内持ち込み手荷物の重量確認
S7航空を利用する場合、前述の通り、チェックインカウンターでの機内持ち込み手荷物の重量確認が必要になります。
なぜなら、その重量確認をクリアしない限り、上の写真のような重量制限をクリアした機内持ち込み手荷物専用のタグがもらえず、しかも、この機内持ち込み手荷物専用のタグは搭乗ゲートでの搭乗手続きの時に、地上係員の手によって、1人1人しっかりチェックされるため、かなりフェアな運用が行われているという印象を感じるほど。
では、実際の重量確認はチェックインの手続きの中でどのように行われているというと、
- S7航空のチェックインカウンターで地上係員にパスポートとEチケット控えを手渡す
- 地上係員に預け入れ荷物の有無を聞かれ、預入荷物がある場合には、カウンター付属のはかり付きのベルトコンベアー上に置くように指示される
- 預入荷物の手続き終了後、重量確認のために機内持ち込み手荷物も一度ベルトコンベアーの上に置くように指示され、その時に10kgの制限を超えていないかどうかの確認が行われる
- 重量の確認後、特に追加支払いなどの必要がなければ、ベルトコンベアー上の機内持ち込み手荷物に重量確認済みを示す緑色のタグが付けられる
- 確認済みの緑色のタグが付けられた機内持ち込み手荷物をベルトコンベアーから下ろすように指示される
- パスポートやEチケット控えと共に搭乗券が手渡され、チェックイン手続きが終了
といった流れになっていました。
この時、重量確認が行われる機内持ち込み手荷物ですが、S7航空の場合、利用者が機内に持ち込むすべての持ち物の重さを確認するのではなく、機内持ち込みスーツケースやバックパックなどの大きな荷物に限られます。
逆に、同じ機内に持ち込む荷物でも、それらよりも小さなハンドバックなどの小型のバッグといった身の回りの品に区分される手荷物については、重量確認は行われず、搭乗ゲートでも緑色の重量確認タグ無しで通過可能という運用が行われていて、少し意外に感じたのも正直な部分です。
ちなみに、身の回りの品に区分されるバッグの目安としては、iPad miniなどのコンパクトなタブレットの影にすっかり隠れるような小さなバッグをイメージすると分かりやすいかもしれません。
S7航空の機内持ち込み手荷物の重量確認対策
こうした形で行われているS7航空の機内持ち込み手荷物の重量確認ですから、10kgの重量制限がネックになりそうな利用者は、
- 重量確認の行われる前に、荷物から財布やタブレット,スマートフォンなどの小さい体積で重いもの(密度の高いもの)を取り出しておく
- あらかじめ取り出したものは上着や小さなバッグに入れて身につけたり、チェックイン手続きの間、ずっと手に持っている
といった対策を当然のように行っている様子がチェックインカウンターで並んでいる短い間にも関わらず、かなり頻繁に見られました。
ちなみに、そうした対策はあとちょっとの重量制限オーバーの利用者に対し、S7航空の地上係員もおすすめしているようで、チェックインカウンター前で大慌てで簡単な荷物整理を行う利用者の姿も同様に確認できるはずです。
また、重量制限についても、周囲の手続きを観察した限り、10kgを1gでも超過すると不可扱いされるというわけではないらしく、10%未満の超過、つまり、11kg未満の重さであれば、問題無しとして黙認されている様子も少なくとも数例は確認できました。
もちろん、S7航空の公表するルールでは機内持ち込み手荷物の重量は10kgまでとされている以上、その時その時の担当する地上係員によってはその条件が厳密に適用されるリスクもあるため、あらかじめそのルールを満たした状態で利用するのが最も安心なのは間違いありません。
しかし、少なくとも海外発のS7航空の近距離国際線を2回ほど利用した限り、そのどちらでも同様の光景が確認できましたから、こうしたゆるやかな取り扱いがS7航空による一般的な運用の可能性も高いと感じています。
S7航空でのワンワールド上級会員ステイタス特典の意味
様々な部分でサービスの対価をしっかり請求するという意味で、LCCを思わせる部分も多く存在するS7航空ですが、ワンワールドに加盟している以上、自社の上級会員はもちろん、提携している航空会社の上級会員に対しても、様々な特典が提供されています。
逆に、S7航空を含め、様々なサービスに追加負担が必要になる航空会社を利用する場合には、そうした負担のほぼ全てが上級会員に対する特典で無料になることが大半です。
そのため、様々なサービスが元々の運賃に含まれているタイプの航空会社を利用するよりもお得度が際立つケースもあるほど。
実際、JMBダイヤモンドのステイタスを保有している私がS7航空を利用する場合、ワンワールドのステイタスの中で最上位となるワンワールドエメラルドとして取り扱われ、
- 事前座席指定の無料化
- 預け入れ荷物1個分の無料化
- ビジネスクラスラウンジへのアクセスの提供
- 優先チェックインカウンターの利用
- 優先搭乗の提供
- プライオリティタグによる預入荷物の優先返却
といった優遇が行われることになっています。
ちなみに、S7航空では、ファーストクラスの運航がなく、ビジネスクラス利用者とビジネスクラス以上の利用者との間で空港内や飛行機内での差別化が難しいという事情もあるため、実質的に多くの場面で、JMBサファイアやJGCといったワンワールドサファイアの上級会員ステイタスを保有している場合でも、ワンワールドエメラルドと特に遜色なく、様々な特典の活用が可能です。
これはより多くの方がS7航空でのワンワールド上級会員向けの特典をお得に活用できるという意味ですから、嬉しい部分の1つなのは間違いありません。
S7航空の利用で活用できるワンワールド上級会員向け特典
こうしてワンワールドの上級会員向けの特典を活用して、お得に利用することが可能なS7航空ですが、本来提供されるはずの、
- 事前座席指定の無料化
- 預け入れ荷物1個分の無料化
- ビジネスクラスラウンジへのアクセスの提供
- 優先搭乗の提供
- プライオリティタグによる預入荷物の優先返却
といった優遇の中には、実際に利用できるものとそうではないものが存在しているのは少しだけ注意が必要かもしれません。
これらの特典の中で活用できるものとしては、
- 事前座席指定の無料化
- 預け入れ荷物1個分の無料化
- ビジネスクラスラウンジへのアクセスの提供
の3種類が安定して提供されている特典です。
まず、事前座席指定については、S7航空のホームページ上での手続きができず、国際電話や英文のメールでのリクエストを行う手間が必要なためお手軽ではないものの、通常は数百円から数千円程度の有料となる事前座席指定が無料で受け付けてもらえます。
しかも、足元のスペースに余裕があり、高めの料金設定がされているエクストラスペースシートも、無料で自由に選べるなど、ワンワールドの上級会員向けの優遇がはっきりと実感できるようになっているのは嬉しい部分ですね。
続いて、預入荷物についても、安価な運賃では通常1個から有料となるにも関わらず、ワンワールドの上級会員ステイタスを保有し、それが航空券上で反映されている場合、1個のみながら完全に無料での利用が可能。
しかも、預入荷物の料金負担は、支払いを行う時期にある程度左右されるものの、金額に換算すると数千円以上の価値がありますから、想像以上に嬉しい特典と言っても良いはず。
我が家でも、ロシアで購入した液体物として扱われる食品をお土産として購入したのですが、それを追加負担のない安心な形で持ち帰ることができたことにはステイタスの恩恵をはっきり実感できるとても良い機会になったくらいですから。
最後に、ビジネスクラスラウンジへのアクセスですが、S7航空の場合、ビジネスクラスの搭乗でも、安価な運賃ではビジネスクラスラウンジへのアクセスが付与されないという意外な落とし穴を有するものの、ワンワールドの上級会員ステイタスを保有している利用者に対しては、例えエコノミークラスの最も安価な運賃でも問題なくラウンジアクセスは付与されるため、そうした想定外の事態に遭遇することなく利用できるのは嬉しいポイント。
このように、本来は様々な部分で思わぬ落とし穴の存在に警戒しながらの利用が必要になるはずのS7航空を、お得に安心な利用ができるという意味で、ワンワールドの上級会員向けの特典はかなり優遇されていると感じる方も多いはずです。
S7航空の利用で効果が感じられないワンワールド上級会員向け特典
その一方で、本来はS7航空利用時のワンワールド上級会員向けの特典として明記され、問題なく利用できるはずにも関わらず、実際には効果が感じられない特典としては、
- 優先搭乗の提供
- プライオリティタグによる預入荷物の優先返却
の2つが挙げられます。
まず、優先搭乗については、S7航空側で搭乗ゲート前に搭乗の順番を案内するためのレーンなども事前に用意しておらず、さらに実際の搭乗が開始されても、搭乗ゲート付近に待っている利用者からどんどん機内に案内されていくという状況。
その結果、優先搭乗は有名無実化されてしまっています。
しかも、預入荷物として荷物を預ける場合、基本的に有料となるS7航空の利用者は、一生懸命機内に荷物を持ち込もうとする関係で、頭上の荷物入れの混雑やスペース確保の難易度は大変なことになりますから、荷物の安心な収納目的で、早くに機内に入りたいという時には、全く期待できない優先搭乗に頼りにするのではなく、少し早めに搭乗ゲートを訪れ、S7航空の地上係員が到着する少し前から、その周辺で待機しておくのがとても大切かもしれません。
次にプライオリティタグによる預入荷物の優先返却ですが、S7航空の利用で最も驚いたのが、効果を発揮しないプライオリティタグの存在でした。
というのも、預入荷物を預けるチェックインカウンターでの手続きでは、しっかりとS7航空のプライオリティタグが装着されたにも関わらず、到着空港のベルトコンベアーに姿を表したのは、預け入れ荷物到着待ちの利用者が残り数人という本当に最後の方のタイミングだったから。
もちろん、預け入れ荷物の返却が始まり、ベルトコンベアーを流れる荷物にプライオリティタグのあるものと、そうではないものが当然のように混在している時点で嫌な予感はしていたものの、プライオリティタグが装着されているにも関わらず、まさかほぼ最後に返却が行われるとは思ってもいなかっただけに、私にとってなかなか衝撃的な出来事になったのは間違いありません。
この他にも空港によっては、利用できるスペースの関係なのか、あるいはコストや手間の関係なのか、チェックインカウンターがエコノミークラス用とビジネスクラス用に分かれていないため、優先チェックインカウンターの利用の特典も活かせない可能性もあることも、S7航空のサービス面での安定性はあまり高くはないと感じ、少しだけ気になるポイントの1つです。
まとめ
機内持ち込み手荷物に対し、しっかりと重量確認が行われ、その結果次第では、基本的に有料の預け入れ荷物の利用が必要になるなど、様々な部分でLCCに近い印象を感じさせるS7航空。
その一方で、ワンワールドに参加する航空会社という立ち位置もあって、JALを含めたワンワールドに加盟している航空会社で上級会員ステイタスを保有している場合、想像以上に多くの部分で本来は追加の料金負担の必要なサービスを無料で利用できるなど、特典の活用ができるという嬉しい一面を有しているのも事実です。
もちろん、そういった特典の中には、本来提供されるはずのものがS7航空側の都合で提供されていないなど、一部のサービスに不安定な印象を感じる部分もあるものの、全体的には十分にメリットを感じられる構成になっていると感じています。
想像以上にお手軽で便利な電子ビザの解禁でより身近になった極東ロシアにアクセスする手段の1つとして、S7航空を使いこなしてみるのもなかなか面白いと思いますよ。
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