JALが国際線の重要な拠点とする羽田空港と成田空港には、ビジネスクラス相当のサクララウンジに加え、より上位に位置するJALが提供する最上位のラウンジサービスとして、ファーストクラスラウンジも用意されています。
そのファーストクラスラウンジの中でも、成田空港第2ターミナル本館に用意されているラウンジでは、
- 2018年11月1日から2019年3月31日:第一期工事
- 2019年4月1日から9月30日:第二期工事
というように、約1年近くに渡ってかなり大規模なリニューアル工事が行われてきました。
目次
リニューアル工事の内容とその影響
今回のリニューアル工事では、
- 第一期工事:4階部分を中心に工事し、3階部分のみでサービス提供
- 第二期工事:3階部分を工事し、工事が終了した4階部分を中心にサービス提供
というように、エリアごとに工事するエリアとサービス提供するエリアを分けて、ラウンジサービスの提供を停止することはありませんでした。
ちなみに、リニューアル完了後は、
4階部分(2019年4月1日先行オープン)
- JAL’s Table:ラウンジスタッフが料理を取り分けたり提供するメインのダイニングエリア
- 鮨 鶴亭:寿司職人による握りたての寿司が振る舞われるダイニングエリアの1種
- ラウンジ:マッサージチェアやリラックスできる椅子などが配置されたくつろぎ重視のエリア
3階部分(2019年10月1日オープン)
- JAL’s salon:メインとなる食事はないものの、アルコールを含む特別な飲み物を提供するバーを備えたくつろぎ重視のエリア
- 喫煙スペース:成田空港のファーストクラスラウンジ内では唯一の喫煙可能なエリア
というようなエリアに分かれ、それぞれのエリアごとにはっきりとした役割分担が行われていることが分かりますね。
しかし、本来は3階と4階を合わせた全てのエリアを利用してファーストクラスラウンジとしての運営が行われていたわけですから、その一部分が工事のため利用できないとなると、ラウンジ利用可能人数が大きく制限されてしまうのは避けられません。
その影響もあって、リニューアル工事中には、ファーストクラスラウンジはもちろん、サクララウンジも含め、JALが運営するラウンジには、
- 国際線ファーストクラス利用者とその同伴者1名
- ワンワールドエメラルド相当の上級会員とその同伴者1名
- ビジネスクラス利用者
- ワンワールドサファイア相当の上級会員とその同伴者1名
- プレミアムエコノミー利用者(当日有償アップグレードを除く)
- エコノミークラスFlex Y運賃利用者
といったラウンジへのアクセス条件を満たす利用者でも、実際にJAL運航便の利用が追加条件として求められるなど、利用者数を制限するための特別な運用が行われていたほどです。
そうした制限も2019年10月1日のリニューアルオープンを期に解除され、好きなラウンジを自由に利用することができるようになりました。
成田空港JALファーストクラスラウンジ3階JAL’s salonへの入室
2019年10月1日に成田空港JALファーストクラスラウンジのリニューアル工事を締めくくる形でオープンした、本館3階にあるJAL’s salon。
そこには、リニューアル工事前と同様、3階にある専用の受付を通過して入室する必要があることに変わりはありません。
もちろん、入室のための手続きでは、ラウンジへの入室条件を満たすことが印字された搭乗券を受付のカウンターで常駐するラウンジスタッフに提示するだけ。
また、特別な事情や理由でそうした条件が搭乗券に印字されていない場合には、多少追加の手間は感じるものの、搭乗券にステイタスカードを添えて提示するだけで、スムーズに手続きを行ってもらえるので大きな心配はないはずです。
さらに、免税店でのショッピングや他の利用可能なラウンジを訪れるなどの目的で、一度ラウンジの外に出て、その後、再入室する場合でも、受付部分で同様に搭乗券などを提示したり、時には顔を覚えられていて、搭乗券の提示不要の顔パス状態での入室が認められることすらあるため、こうしたケースも全く問題はありません。
ちなみに、本館3階にあるJAL’s salon用の受付でも、4階の受付同様、ファーストクラスラウンジ利用者を対象に無料でプレゼントされている新刊本は用意されていて、希望する場合はラウンジスタッフの方にその旨を伝えるだけで提供してもらえます。
成田空港JALファーストクラスラウンジ3階JAL’s salonのインテリア
受付を終え、そのまま奥に進むと、訪れたのが工事完了直後ということもあってか、お祝いの花が並ぶ光景も。
その奥には、ゆったりとした配置で整然と椅子が並ぶ、JAL’s salonが広がっていました。
椅子自体、いずれも高品質ながら座り心地の異なる種類のものも用意され、好みに応じて選べるのも好印象。
壁面にはラウンジ内の雰囲気に調和している、強すぎる主張を感じない穏やかな印象のアートも。
また、内部にはJAL’s salonの目玉となるサービスが展開されるバーカウンターも用意。
その背景としてグラスや提供されている特別なアルコールなどもきれいにディスプレイされていました。
そのバーカウンター以外にも、上の写真のようにセルフサービスで楽しめる飲み物などの並ぶエリアも用意されています。
しかし、後述するように、JAL’s salonでは飲み物を片手にゆったりと楽しんで欲しいという目的があるためか、料理や食べ物の提供は限定的。
そのため、食事を重視したいという方は、JAL’s Tableや鮨 鶴亭などのダイニング機能が充実した4階にあるラウンジを訪れなくてはいけないという部分に少しだけ注意が必要かもしれません。
この場合、JAL’s SALONと4階との行き来は、
- 3階ラウンジのエントランス内に用意されたエレベーター
- 3階ラウンジのエントランス外にあるエスカレーター
のいずれかを利用することになります。
もちろん、JAL’s salon内にも、
- トイレ
- 通話ブース
- ロッカー
など、4階のJALファーストクラスラウンジに用意されている種類の設備や機能は用意されています。
しかし、それら全ての設備や機能に対し、リニューアル工事によって手が加えられているわけではなく、場所によってはかつてのリニューアル工事前の3階JALファーストクラスラウンジの面影を感じる場面もありました。
そういう意味では、3階ラウンジでは、旧来の物理的な鍵を利用するタイプのロッカーがそのまま利用されている部分が分かりやすいかもしれません。
その一方で、4階ラウンジには上の写真のように利用者自身が自由に暗証番号を設定するタイプの最新式のロッカーが用意されているわけですから。
成田空港JALファーストクラスラウンジ3階JAL’s salonのBARカウンターサービス
JAL’s salonのメインとなるBARカウンターサービスはとても力の入ったものになっていて、3階ラウンジ内の各席に専用のメニューが用意されているほど。
内容としては、月替メニューとして、
- 冷/温の日本茶
- 和菓子
- 日本のクラフトウイスキー
- 国産ウイスキー
- 国産クラフトジン&ウォッカ
などのラインナップが掲載されています。
緑茶と和菓子のラインナップとしては、
10月
- 温:玉緑
- 冷:水出しゆず緑茶
- 和菓子:宗家 源 吉兆庵 織部錦
11月
- 温:焙じ茶
- 冷:水出し茶 山椒
- 和菓子:鶴屋吉信 紡ぎ詩
12月
- 温:帛
- 冷:水出しレモングラス緑茶
- 和菓子:東京小桜 おもいで(白太)、ふるさと(黒太)
というように、温かいお茶と冷たいお茶、そしての和菓子のそれぞれが1ヶ月毎に切り替わっていきます。
温かいお茶も冷たいお茶も、注文を受けてから利用者1人1人に専用のお盆に用意されたものが提供されます。
お茶を注文した際には基本的に和菓子も案内されるのですが、全体的にすっきりした味わいのお茶との相性も良好なので、一緒に味わってみるのもおすすめです。
個人的には、JAL’s salonと同じ3階にあるシャワールームを利用した後のポカポカした状態で、JAL’s salonに立ち寄り、そこに用意されているきりりと冷やされた風味豊かな水出し茶で喉を潤すのがとても好印象で、気に入っています。
また、それ以外にもこだわりのアルコールとして、
日本のプレミアムウイスキー:
- 響 ブレンダ―ズチョイス
- 山崎12年
- 白洲
日本のクラフトジン/ウォッカ:
- ROKU GIN(クラフトジン)
- HAKU (クラフトウォッカ)
というようなラインナップも常時提供されるようになりました。
一方で、アルコールの中でも、緑茶や和菓子と同じ様に月替での変化を見せるのが、日本のクラフトウイスキーのラインナップ。
具体的に、10月から12月までのラインアップはというと、
- 10月:厚岸蒸留所 厚岸ウイスキー(北海道)
- 11月:マルス信州蒸留所 シングルモルト駒ヶ岳(長野)
- 12月:嘉之助蒸留所 嘉之助ニューボーン(鹿児島)
という内容になっています。
この中では、10月の厚岸ウイスキーがこれまでにもクリスマスや元旦などの特別な日のファーストクラスラウンジ限定で提供されてきた希少な銘柄ですがオープン直後ということで特別に提供されているのかもしれませんね。
成田空港JALファーストクラスラウンジ3階JAL’s salonのサービス
JAL’s salonを利用する上で注意しなくてはいけないのは、成田空港本館にあるJALファーストクラスラウンジの中でもゆったりと寛ぐためのエリアとしての機能を特に強化されたエリアになっていることです。
そのため、豊富なラインナップを誇るアルコールを中心とした飲み物に比べると、提供されている料理や食べ物の種類は大きく制限され、
- 2種類の前菜的な料理(ガラスケースで提供)
- 和菓子(BARカウンターで提供)
- カレボーミルクチョコレート
- キットカット チョコレート
- あられミックス
などが用意されているのみ。
とはいえ、JAL特製ビーフカレーを中心とした料理や食べ物の香りとはほぼ無縁の空間が維持されていますから、食事にはダイニング機能を有した4階部分を活用しつつ、3階のJAL’s salonではゆったりと寛ぐことを重視するというのは、重要な使い分けの方向性かもしれません。
ちなみに、2種類用意されている前菜的な料理は、食器はJAL’s salon専用のものが利用されているものの、料理自体は4階でも別の器に盛り付けられているもの。
しかし、専用のケースに入れられた状態で冷蔵保存され、きれいな器に盛り付けられて提供されると、また異なる趣が感じられますね。
その他のJAL’s salon内に用意されているサービスとしては、
- オレンジジュース
- トマトジュース
- 烏龍茶
- スカイタイム(キウイ味)
- アップルジュース
- グレープフルーツジュース
- トニックウォーター
- ポカリスエット
- ペリエ(炭酸水)
- 牛乳
などのソフトドリンクの入ったガラスドアタイプの冷蔵庫。
また、その横には生ビールとして、キリン 一番搾り プレミアムも専用のサーバーに用意される形で並んでいました。
壁側には、
- カレボーミルクチョコレート
- キットカット チョコレート
- あられミックス
などのチョコレートとおつまみに加え、各種ハードリカー類。
さらに、冷やされた状態で提供されるシャンパンや白ワイン、日本酒なども並びます。
その中にはシャンパンとして、月替で提供される1本に加え、JALファーストクラスラウンジの定番となっているローランペリエもラインナップされています。
そのため、成田空港第2ターミナルにあるJALファーストクラスラウンジとしては、
- 本館4階の鶴亭横
- 本館3階のJAL’s salon
- サテライト
の合計3ヶ所でローランペリエが楽しめるようになったということですね。
これは、かつてラウンジ内の混雑緩和を主な目的にサテライトのJALファーストクラスラウンジでのみローランペリエを提供していた、リニューアル工事開始前と状況と比べると大きく利便性が向上していることが分かります。
ちなみに、JAL’s salonがオープンした2019年10月に提供されていたラインナップとしては、
シャンパン:
- ローラン・ペリエ ラ キュベ
- Blanc de Noirs
白ワイン:
- Chablis Terres de Pierres(フランス)
- Tramin Gewürztraminer(イタリア)
赤ワイン:
- Langhe Nebbiolo(イタリア)
- GLADSTONE URLAR Pinot Noir(ニュージーランド)
日本酒:
- 天上夢幻 大吟醸 山田錦(宮城県)
- 而今 純米吟醸 八反錦(三重県)
- 美丈夫 純米大吟醸 舞 しずく媛(高知県)
となっていて、個人的には日本酒の中でも三重県の而今(じこん)が選ばれているのが面白いと感じました。
それ以外のサービスとしては、JALファーストクラスラウンジ利用者を対象に無料で提供されるJOHN LOBBによるシューシャイン(靴磨き)サービスも、
- リニューアル工事前:3階ラウンジ奥の常設カウンター
- 4階リニューアル工事完了後:4階ラウンジエリア近くの臨時カウンター
- 3階リニューアル工事完了後:3階JAL’s salon内の常設カウンター
というようにリニューアル工事の実施に伴って、カウンターの場所に変遷こそあったものの、2019年10月1日のJAL’s salonオープンによって、ようやく新たな常設カウンターでのサービス提供が開始されました。
JAL’s salonオープンに伴って発覚した本館JALファーストクラスラウンジ最大の弱点
こうしたサービスが提供されるJAL’s salonのオープンによって完成した成田空港第2ターミナル本館のファーストクラスラウンジですが、それまで薄々感じていたものの、ラウンジとしての全体が完成よって提示されたことで、はっきりと発覚してしまった弱点が存在しています。
それが、JAL’s salon自体には窓が2席分をカバーするだけの1ヶ所しか用意されていないため、リニューアル工事前のJALファーストクラスラウンジでは当然のように楽しめていた窓の外の景色が楽しむのがとても困難ということです。
しかも、その1ヶ所だけ用意されたJAL’s salon内の窓も、本館とサテライトを結ぶ通路の付け根に近い部分に面していて、以前のような開放的な眺めはなかなか期待できないのも残念なポイント。
これはかつてはJALファーストクラスラウンジとして、寿司バーのカウンターが用意され、これから搭乗する飛行機の姿をダイナミックに楽しめた大窓を有するエリアが今回の改装に伴ってサクララウンジの拡張用エリアとして活用されてしまったのが最大の理由です。
もちろん、繁忙期には唯一食事の楽しめるダイニングエリアに入るだけでも、長い長い順番待ちの列に並ぶ必要があるサクララウンジの混雑緩和がJAL側にとっての喫緊の課題なのは理解しているものの、それと引き換えにファーストクラスラウンジの魅力が大きく失われるというのはとても残念でした。
一方で、4階にあるJALファーストクラスラウンジの窓からの景色はどうなのかというと、JAL’s Tableのあるダイニングエリアとラウンジエリアの2ヶ所に窓はあるものの、ダイニングエリアからの眺望はエアコンの室外機ビューとでも表現するしかないような状況。
そして、ラウンジエリアの方はというと、ダイニングエリアよりは開放感の面では多少良好ながら、空港施設&花壇ビューという空港ラウンジに期待する眺望とはかなりかけ離れたものが提供されているという部分に変わりはありません。
そうした事情がありますから、窓からの景色を楽しみながらラウンジでの時間を過ごしたいという場合には、
- サテライトのJALファーストクラスラウンジ
- 本館のサクララウンジ
のいずれかを利用する必要があるということです。
ただし、それらのラウンジを利用する場合、
サテライトのJALファーストクラスラウンジ:
- 本館からサテライトまで約500mほど歩く必要がある。
- サテライトのラウンジ営業時間は7時30分から11時、15時から19時30分と、本館のラウンジ営業時間の7時30分から22時までに比べると、常に営業しているわけではない
- サテライトではJAL’s Tableや鮨 鶴亭、JAL’s salonなどのファーストクラスラウンジらしい特長的なサービスが提供されていない
本館のサクララウンジ:
- JALファーストクラスラウンジと比べてラウンジ内が全体的に混雑している
- 混雑時にはダイニングエリアで長時間寛ぐことが制限される
- JALファーストクラスラウンジ提供されている料理やサービスに差が設けられている
といったデメリットを受け入れた上で訪れる必要があるのは少しだけ注意が必要です。
個人的には、2席分とはいえ、窓からの景色もなんとか楽しむことが可能で、柔らか&暖かい間接照明で彩られ、飲み物などのサービスが高品質なJAL’s salonで過ごす時間も気に入っているため、残念に感じる部分は残しつつも、JAL’s salonを訪れ、そこを利用する機会は今後着実に増えると予想しています。
まとめ
JAL’s salonのオープンによって、ようやくすべてのリニューアル工事が完了した成田空港第2ターミナル本館にあるJALファーストクラスラウンジ。
いくつか気になる弱点こそ存在するものの、インテリアや料理、サービスなど、次世代の最上位ラウンジとしての魅力が感じられる姿に生まれ変わったのは間違いありません。
また、成田空港本館にあるJALファーストクラスラウンジとサクララウンジのリニューアルやその後のサービス改善で得られた経験や評判を元に、
- 羽田空港国際線ターミナルJALファーストクラスラウンジ
- 成田空港第2ターミナルサテライトファーストクラスラウンジ
などのリニューアルも行われていくのがJAL側の持つ既定路線のようですから、その基礎としても成田空港第2ターミナル本館JALファーストクラスラウンジでは、様々な試行錯誤がこっそり行われていたりしていますから、そうした部分も楽しみに訪れてみるのも面白いと思いますよ。
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